アイリーン 第一章 -リッカルード-
16.初体験
ここの所、数日は実に目が回りそうなほど忙しかった。
しかも実にハードな1日が多く、寝る頃には完全にへばっている状態だった。
頭の中もパンク寸前で、精神的にもいっぱいいっぱいだった。
ほんとに初体験ばかりで体中がイタイ。
「もう寝ちゃった?」
イーグルの声が耳元で囁くのが聞こえるけど、身動きするのさえ今はツラい。
「んー…」
クスクスと笑う声がする。
そんなに笑うけど、女の子ってホントに大変なんだぞ。
自分が女の子なんだって、今更だけどちょっとだけ実感した。
女の子ってこんなことするのかっていう驚きだったり、まだ精神的には抜けていない少年の心が恥ずかしがったりする。
「そのまま寝たらドレスに皺がいくよ?」
そう、スカートにまだ慣れないのだ。
「んー」
「はい、堂々とストリップしないの。もうちょっと自覚を持とうね。じゃないと襲うよ?」
ファスナーを下ろしかけていた手を止めて、ぐいぐいとイーグルを寝室から追い出した。
さっさと簡素な部屋着に着替える。
本当は上半身の下着も脱いでしまいたいとこだが…イーグルが外でまだかと聞くということは、入ってくるつもりみたいなのでやめておいた。
シシィに男性の前では不用意にはずしてはいけないと注意されたのだ。
言われなかったら普通にはずしていたと思う。
「まだ?」
「…いいよ」
ベッドに戻ろうともそもそ動いていたら、部屋に入ってきたイーグルに布団に入る手前で阻止された。
はっきり言って、放っといてほしい。
むしろ寝かせてほしい。
今日は本当に限界に近い、睡魔が襲ってきている。
今ならおやすみ三秒だ。
「…………」
何も言わずじとっとイーグルを見上げる。綺麗な青い目がきょろっと動いた。
「眠いの?かーわいい」
お褒めの言葉を半分無視して、また布団に手を伸ばした。
今度は邪魔されずにすっと中に入れた。
…それと一緒に隣にでかい物体が俺の横に滑り込む。
「をぃ」
「…何もしないからさ。横で寝るだけ、ね?」
無邪気な少年のように目をキラキラさせて…添い寝を所望された。
まぁ、これくらいはいいか。
なんて、眠さに負けてこっくりと頷いた。
髪を大きな手が優しく撫でて、気持ちよくなって目を閉じた。
背中が温かくて心地良い。
急速に眠りに引き込まれていった。
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